「来月屋久島の沢行かない?」
先日一緒に上の小屋谷を遡行したK氏からの連絡が全ての始まりだった。
当初は屋久島を、九州を代表する宮之浦川を目標にして事前準備を着々と進めていった。
入渓予定は9/14-16日。
12日時点天気予報だと秋雨前線が屋久島の上空に停滞し、警報レベルの雨予報になっている。K氏と連絡を取り、「13日朝時点で好転しない限り剱岳のチンネに行こう」と打ち合わせる。
13日朝。天気は依然変わらず。剱岳への転身が決定する。
沢登り用のパッキングをしていたため、アルパインクライミング用のパッキングに切り替える。
行程
13日
家発(18:00)→高速基山着。K氏と合流する。(21:30)
14日
三方五湖PA着。1時間ほど仮眠をとる。(05:00/06:00)→馬場島登山口着(09:40)→早月小屋着(14:00)
15日
起床(01:00)→出発(02:15)→カニのはさみ(04:45)→剱岳山頂(04:55/05:25)→池ノ谷乗越(06:20)→三ノ窓(06:50)→チンネ左稜線取付き(07:20/07:40)→終了点(13:10/13:30)→池ノ谷ガリー(13:50)→池ノ谷乗越(14:10)→剱岳山頂(15:30)→早月小屋(17:40)
16日
起床(04:00)→出発(05:30)→馬場島登山口(07:50)
使用した道具
ヌンチャク10本、カム1セット(0.3-2)、アルパインクイックドロー4本(120×2,60×2)、
支点構築用180cmスリング、環ビナ
コロナのため、早月小屋が休業していたため、水6L+酒1Lを担ぐ。登攀装備含めて約25kg。肩にずしりと重くのしかかる。
大きな樹木に癒されながらもゆっくりと、確実に高度を上げ14:00に早月小屋に到着した。
歩荷の疲れだけでなく、前日の移動の疲労もあったためテントを設営し夕食を取り17:00頃就寝。
15日
01:00に起床。朝食はカレーメシをポテトフレークスで嵩上げしたもの。これがなかなか良かった。テントから顔を出すと昨日のガスがきれいに晴れていて、星が見える。これは期待できそうだ。装備を整え、02:15出発。しばらくヘッデンを頼りに歩く。
北方稜線へは日が昇ってから取付きたかったので、のんびり休憩しながら歩いてゆく。
ちょうど剱岳山頂付近で夜が明け始める。雲海と朝焼けに感動し、泣きそうになる。
私にとっては初めての剱岳登頂。それもこんな絶景が待ち受けてくれてくれた。
剱岳登頂に満足したところで、今回の目的のチンネに向けて気持ちを切り替える。
歩みを進めていくうちにご来光を望む。今日の行程が長引けばヘッデン下山になるのでモバイルバッテリーで充電しておく。
北方稜線から池ノ谷乗越へ。時折ハーケンが残置されていたが慎重にクライムダウン。意外と踏み跡が明瞭で大きくタイムロスすることはなかった。
池ノ谷ガリーはガラガラで一度落石を起こすとそれが呼び水となりさらなる落石を誘発する。ここも踏み跡がついており、それを丁寧にたどれば落石は防げた。
雪渓は薄い。簡易アイゼンを装着し雪渓を渡る。
2個目の雪渓。状態がかなり悪く、上部は厳しそう。
左岸の草付きを下降し、雪渓の下部からトラバース。取付きまでもう数百mのところだったが、意外と時間を要してしまった。
ロープを結び、クライミングシューズを履いて07:40クライムオン。
3P目はⅡ級のやさしいピッチ。だったものの終了点を見つけ切らず、誤ったルートを進んでしまう。おそらく4P目の隣のルンゼに紛れ込んでしまった・・・?
トランシーバーも誤作動でチャンネルが切り替わっており交信できなかった。
50mいっぱい出してピッチを切る。その後K氏リードでルート復旧する。
ご迷惑おかけしました・・・。
5Pの草付きリッジは快適に進める。高度感のある写真を撮っていただいて感謝。
6~7Pは快適なフェースを登る。
ピッチ自体は易しかったが、また終了点を見誤り手前でピッチを切ってしまう。5m先にハーケンが連打されておりそこが終了点だった。
8P目K氏リード。自分が7Pの終了点を手前で切ってしまい、ロープが足りなくなったこと、核心ピッチをK氏がリードすることを考慮し、8Pの途中でピッチを切る。
核心部の鼻。話では「かぶりをいなすイメージ」と聞いていたが本当にその通りで体感では被っていなかった。細かいホールドをつなぎながら登ってゆく。
10P目。足がむくんできて痛くなってくる。クラックにフットジャムを決めたり、左右に重心移動して処理していく。意外とテクニカルで楽しかったピッチ。
11P目。快適なフェース。写真はないです・・・。
12P目フェースを越えるとウイニングロードのような快適なリッジ。13:10登攀終了。
5時間半と良いペースで終えることが出来た。
チンネの頭からコルへとクライムダウン。懸垂下降を2回交え、池ノ谷ガリーへ至る。そこから北方稜線を戻り本峰へ。
15:30頃、2回目の剱岳山頂へ。この時点ですでに13時間以上行動している。
後は気合で早月小屋へ下るだけ・・・。疲れた体に鞭を打ち気合で小屋まで歩く。
到着するころ、ガスに包まれた小屋に夕日が射し込み幻想的であった。
美しい夕日を見ながら余韻に浸る。夕食を取り、泥のように眠りにつく。
最終日は04:00に起床し、05:30に出発。無心で歩き07:50に下山。
総評
- 天候に恵まれ最高の登山だった。下山時もほぼガスが出ておらず、一面雲海を望むことが出来た。
- 本チャンの経験が不十分でピッチの切りどころを誤ってしまった。マルチピッチだとハンガーが2本打たれているし、沢だと何もないし・・・。良い経験になりました。
- 今まで培ってきた知識、技術、経験、体力、精神力あってこその今回の山行が出来たと感じる。これらが不足していたらまず"チンネ行こう"とのお声かけすらなかっただろう。これからも精進していきたい。
最後に、今回の山行を持ち掛けてくれたK氏、ありがとうございました。本当に最高の山行でした。またよろしくおねがいします!!