2021.11.04 追記
登攀にあたる注意点
①1Pの下部が大きく崩壊しています。崩壊箇所は通らずに、右寄りを直上して下さい。
チェーンで固定した岩がありますが、チェーンで止まっている状態ですので触らないようしてください。
まだ浮いている箇所があるかもしれません、トップが登る際は、岩陰に退避してのビレイが必要です。
②前回の整備(2009年)で、整備上、ビレイ点にボルト、ハンガーを設置しましたが、今回、3P,4Pのビレイ点を撤去しました。
よって、ビレイ点のハンガー設置は6P中、5,6Pの2か所となりましたので、カムの多めの携行が必要です。(0.5〜2番)
概ね、ルート上の草、枝は伐採しましたので快適に登れると思います。
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2021.04.28
比叡山1峰北面Bピーク Bフェイス・ムササビファミリィルート。
Bフェースは1峰北面でもっとも大きなフェースである。上部に威圧的なハングを持ち、その下にも全体的に急傾斜で登るにはかなりの困難を予想される。このルートはそうした威圧的なフェースをナチュラルプロテクション主体で登ったもの。各ピッチも5.11クラスが連続し、その内容の素晴らしさは比叡山諸ルート中でも屈指のものといえる。(新版 日本の岩場より引用)
相棒K氏に以前より「ムササビファミリー登らない?」と声をかけられていたが、ルートの内容的にも登れる気がしなかった。
2020年秋からクラックの聖地三倉岳に通い、比叡でもクラックのショートルートを登り、矢筈のもぐらたたきで洗礼を受けた今、改めてお声かけ頂き「いっちゃいますか!!」との事で今回のクライミングが決まった。
07:30頃 トイレ横駐車場で装備の合わせ。
持って行ったギアはキャメロット0.4-4を2セット、0.3を1、ナッツ1セット、スリング60cm,120cm4本。ヌンチャク9本(ノーマル6,長3)、8mm 50mダブルロープ×2、アブミ、スカイフック、ザック1。
リードは空身で登り、フォローがザックを背負うスタイルとした。
といってもザック内には水1L、アプローチシューズ2、フリース2の程度。フルでカムを持つリードよりも軽いのではないか?
千畳敷からニードル左岩稜方向に20分ほど歩き、黄色の反射材が目印になっているところが取付きだ。
少し高くなっているところから岩峰を望む。
今回の登攀にあったって、宮崎の岩場、日本の岩場。
2009年8月の"天と地の間”様と
2009年5月の"今日もお天気"様の記録を参考にさせていただきました。
1段高くなっているところから1P目を望む。
1P目 泥の詰まったチムニー~フェース~ハンド
"1P目は短くて簡単。5.9ぐらい"との記述があったが、実際に目の前にするとクラックもホールドもない。その割にはブッシュや土が詰まっている(笑)
9時クライムオン。
登攀直後から埃にまみれる。後から自分が撮った写真と過去の記録を見返すと、なんと岩がかなりはがれている!!
ボルトで吊られた岩は確認できたが、そのホールドを使用禁止とすると、そのフェース面のグレードはかなりのもの。プロテクションもとれない。しばらく周囲を見渡すと右手側にハンドサイズのクラックが走っているので右にトラバースしカンテに周りこんだ。
おそらくピナクルの上部まで行けば初登時のルートと接続するだろうと思い、吊られた岩を左下に見る位置の草付きテラスでピッチを切る。終了点はカム3つ。
2P目 フィンガー~フェース
K氏リード。下部はフレークをレイバック気味に登り、フィンガーを左上する。薄被りはガバをつなぎながら越えてゆく。
ロープが15m出たあたりで「ダブルクラックがあった!!」との声が聞こえ、ひとまずほっとする。2P目終了点はオールアンカー2本。
3P目ダブルクラック~チムニー
自分が2P目のビレイ点に到着するとクラックの中から80cmほどのモフモフした何かが飛び出てくる!ムササビだ!!!二人で歓喜を上げ写真に収めようとするが、尋常じゃない登攀力で逃げて行った。とてもうらやましい・・・w
自分はビレイ点からのクラックへの入り口が微妙に悪く少しドキドキしながら入っていく。ダブルクラックに入り込むとレイバックやステミングを交え高度を上げていく
チムニーに入ってからの左に抜けるハンドトラバースが悪い。足元は切れていて高度感もある。これはもしかして・・・矢筈のもぐら叩きルートでやったやつだ!!!
右刺しで抜けようと思ったが、チムニー内に足を決められず、もぐら叩きよりやや難しい印象。左刺しが正解だったか??
A0交えながら縦カチをつないでかろうじて突破。
その後直上していく際に草を踏んだか、スリップして3mほどフォール。X4の0.5ががっちり止めてくれた。ビレイありがとうございました。
うるさいブッシュをかき分け短いチムニーへ。記録ではその後左にトラバース。
細かいフットホールドをなかなか拾えず、ハンドジャムに宙吊りになったり、テンションもらったり、奮闘しました。意を決して水平クラックを渡っていく。カンテから先の状況がわからずドキドキする。コーナーにX4 0.75を決め、思い切って乗りこむ。
アンダーからのマントリングを返し、数m歩くと3P目終了点があり胸をなでおろす。
先の見えないカンテへのトラバース。初登者意気込みに感服する。
最近のクラック修行がなければまず突破できず、敗退していただろう。
終了点はオールアンカー2本。1本は緩んでいたのでトライカムで補強。
4P目 クラックを直上~岩盤状のフェース。
ここにきてようやくルート上にボルトを発見する。このピッチは3本ボルトが打たれていた。
相方の素晴らしいリードで自分は難なく突破。出だしと抜けのムーブが起こせず、A0。
相方の「見た目ほど悪くない」と言っていましたが、自分にとっては悪かったですw
傾いてはいるが安定したテラスが4P目終了点。
5P目 コーナーのフィンガークラック
奇数ピッチリードの私にとって最後の仕事。4P目ビレイ点から数m上がるとコーナークラックの右手側に回り込めそうなバンドが走っている。そちらに偵察に行ってみたが、最後のトラバースで行き詰りクライムダウン。改めてコーナークラックに取付く。
離陸はステミングを交えながらやや土の詰まったフィンガー。コーナーに入り込み何とか0.3を決める。
それ以降はフリーでリードする登攀力も、マイクロカムに落ちるメンタルもなく堅実にエイド。ナッツの4番やキャメロットの0.1番にアブミをかけそーっと高度を稼ぐ。
6mほど人工で登り、最後は豪快にマントリング返して5P目終了。
6P目 水平トラバース後カンテを直上
威圧的なハングの下に傾斜の強いスラブ。
相方はすいすい登っていくも、フォローの自分はすぐ行き詰まってしまう。
1本目のボルトまでは直上し、そこからはランナウト気味のトラバース。
完全にメンタルが負け、足を信用でき無くなり行き詰る。
初登者が2時間も躊躇していた気持ちがよくわかる。
最終ピッチ、フォローの自分が抜けれないなんてことがあればあまりにも悔しいので、意を決して?細かいカチにスカイフックアブミをかけてトラバースを処理。生きた心地がしなかった。(実際は落ちても振られるだけだが。)
いやー、これをリードで行った相方は本当にすごい。尊敬します。
カンテに回り込み階段状を超えるとトップアウト。無事に抜けれて安堵したからなのか、達成感からなのか分からないが、感極まり、思わず涙が頬を伝う。
ナイスクライミングでした。
6Pで約8時間にも及ぶクライミング。時間がかかったのは自分のクライミングが遅かった所為である。10年前に整備されて以降、1件しか登られた記録のないが、この素晴らしいルートがほとんど登られていないことが不思議なほどである。
フェースのパワフルなムーブから、バランシーなスラブ、奮闘するワイドクラックと変化に富んだルート。そしてミニマムボルト。
今日はかろうじて何とか突破出来たが、最近のクラック/スラブ修行。人工壁での登りこみがなければ敗退していただろう。
現在の自分の実力では"なんでもありの本チャンルート"というスタイルでの登り方だったが、実力がついたらオールフリーでの突破を目標に再度訪れたい。