アル中クライマーの忘備録

好物は酒と山と岩。

撤退

自分がリーダーの山行で、初めて撤退の判断を下したので、その顛末を。

先日の記事どうやって山を覚えたか? - 山日記の中で"自分が登山技術を覚えた順番は"無事に生きて帰ってこれること"が先行した。" と書いた。

 

今回「経験無いけど沢登りしていみたい!」という方を連れていくことになった。

相方の知識技術経験がわからなかったため、通い慣れている沢を選択した。

開放的で美しい渓相の沢で危険個所はほぼない。登攀も3m程度の小滝がある程度で、フォールしてもドボン程度だ。さらに言えばすぐ真横に登山道があり、エスケープが容易なことである。そんな沢に連れて行った。

 

入渓してから4時間ほどワイワイと遡行していたが、メンバーの1名がゴーロで転倒。右足を負傷した模様。転倒後すぐには立ち上がれず、話を聞くと膝と足の甲に痛みあり。

沢の水で冷やさせる。10分ほど冷やし続けるも痛みは引かず、若干腫れが出てきた。

ここで"これから大した難所もないし、行けるところまで行こう"と"万全をとってここで下山しよう"の2つの選択が頭をよぎった。

そのメンバーは私より大柄で、もし悪化した場合、到底担ぐことはできない。そして何より負傷した状態で遡行する必要があるのか?と考え、「ここで撤退。すぐ脇の登山道に出て下山する」と決断した。

負傷したメンバーの観ていると、足をかばいながらなら歩ける様だ。負担を減らすために荷物は私が担いだ。下山路はよく整備されており、30分ほど歩いて入渓点にたどり着くことが出来た。

 

そして先ほどそのメンバーから連絡があったが、骨折と靭帯損傷だったとの事。

撤退の判断をしてよかった・・・。と思いました。

 

で終わったらただの感想なので、もうプラスアルファでリスク分析みたいなものを。重大遭難にならなかった要因としてよかった点の第一は計画ではなかったかと思う。

沢から数分で登山道に戻れるところでなければ苦戦が予想された。(その十数mでも痛がっていたので。)本当に登山道沿いの沢にしておいてよかった。

また、下山の遅れ/停滞に備えての装備(ヘッドライト、ツエルトetc)を持っていたため精神的な余裕があった。最悪鎮痛剤を飲ませて1晩ビバークか?とも考えた。

 

細かい反省点ではあるが、折り畳み式のトレッキングポールをいつもは携行しているが、今回に限って携行していなかった。あればもう少し楽させてあげれたのかと思う。

 

登山だけでなく仕事においてもですが、イレギュラーの発生時はいかに冷静に対処し、自分が何ができるか?もっとも生命の安全を確保するには何をすればいいのか?

を考える能力が必須と感じた。それと重荷を担げる体力。ライト&ファストという考え方があるが、自分は割と逆の考え方をしている。山(特に沢登りなど不確定要素が多い山行)に入るときはツエルト、非常食、ロープ、無線機等々の装備を担ぐようにしている。それらの安全装備を担いで歩く体力、登攀力がなければそれは自分の実力に対して見合っていない山であるとの考えをしている。

もちろん先鋭的な登山であればギリギリまで装備を削るという事もあるが、とっていいリスクととっていけないリスクの判断。挑戦と無謀は違うという点は強く意識している。